勉強会『シュールレアリズム』を読む
第1回の報告
日 時:2013年5月20日(月) 14:00〜16:30
場 所:福沢一郎記念館(東京都世田谷区砧8-14-7)
参加者:小林宏道、大谷省吾、弘中智子、伊藤佳之
1 「近代美術思潮講座第4巻」の『シュールレアリズム』
・刊行年月日:1937(昭和12)年8月25日
・発行所:アトリエ社
・総ページ数:220
・定価:2円
※他の近代美術思潮講座の価格、装丁、デザインも同じ
※(ネタ)当時の映画館入館料がおよそ50銭、福沢一郎絵画研究所の入所金が2円
2 単行本『シュールレアリズム』
刊行年月日:1938(昭和13)年9月25日
発行所:アトリエ社
総ページ数:220
定価:1円50銭
表紙に本文中「妙屍体」の例(No.2)
〜James Thrall Soby, After Picasso 1935 から「妙屍体」を引用している (後日確認)
3 両者の違い
口絵キャプション部分
「偏執狂の家と内部(在・深川門前仲町)」→「門前仲町の家」
誤植は後の版で訂正されず
・なぜこの部分だけ改変されたのか?
…「偏執狂」という言葉に出版社がダメを出したのか?
…政治的な理由は? しかし他の(例えば共産主義との関わりに関する)部分などは変わらず…引き続き考える
4 「近代美術思潮講座」
(1)第1巻:『レアリズム』相良徳三著
(2)第2巻:『フォーヴィズム』荒城季夫著
(3)第3巻:『キュービズム』伊原宇三郎著
(4)第4巻:『シュールレアリズム』福沢一郎著
(5)第5巻:『フューチュリズム,ダダイズム,エクスプレッショニズム』神原泰著
(6)第6巻:『アブストラクト・アート』長谷川三郎著
・これらはすべて翌年に装幀を変えて再刊されている(ようだ)〜出来れば現物を確認したい
・各号の刊行年月日を調べる
・アトリエ社の出版物の変遷も押さえておく必要がある
5 時代背景
・このシリーズが 普及版として再刊されたということは、それなりに売れたということ…売れるアテ、目論見があったのか
・Momaの「キュビスム、アブストラクトアート」「ファンタスティック・アート、ダダ、シュルレアリスム」の大きな影響があるのでは?
〜図版の引用なども…
・そうした欧米のタイムリーな話題を知らしめようという意図も…例えば教科書のように使うとか…
6 本書の構成
1「超現実主義の意義及びその史的展開について」
2「超現実主義と絵画」
3「超現実主義の先駆」
4「超現実主義とレアリズム」
5「超現実主義と抽象芸術」
6「ヒユマニズムへの一瞥」
7「描かれた人間」
8「超現実主義と日本的なもの」
9「日本に於ける超現実主義運動」
10「超現実主義の将来」
・新聞や雑誌の原稿と重なるものがある(滝沢恭司さんの解説(『コレクション 日本シュールレアリスム』中)参照…)
〜原稿の発表時期にもよるが、まず『シュールレアリズム』の原稿を準備しつつ、その一部を新聞や雑誌に提供したのでは?
・本書と新聞・雑誌の原稿を比較しつつ、どんな違いがあるかを詳しくみる必要あり
〜これは各章を読み込む段階でそれぞれ検討
6 それぞれの考える問題点、課題
・シュルレアリスム理解についてアラを探すのではなく、福沢がどのような言葉を用いてこの思想・運動を認識していたのか、そこを出来るだけ丁寧に追ってみたい
・第一章でそれを見出すのは割と大変そうだが…
・後半になると、福沢独自の解釈が増えて、より突っ込んだ議論ができそう
・単なる概説書とはなっていない、章立てのギミックにも注目したい。
・「日本的なもの」のあたりはなかなか難しそうだが、重要な部分。
7 これからのすすめ方
・ 各章ごとに区切って、担当を決めて調べ、発表する
・まず第一章は伊藤が担当…
8 勉強会の運営について
・会費は500円…お茶とお菓子は用意、残りは財団に寄付
・毎回会計報告を出す
・次回は7/2(火)14:00〜
8 その他
・ 富岡の福沢旧蔵図書目録調べる…〜 関連のあるものが出てくる可能性も
・富山妙子さんが、美術工芸学院で、『シュールレアリズム』を教科書に使っていたと証言!
〜「近代美術思潮講座」刊行の思惑…教科書としての使用が念頭にあったか?